調査によりブナ林の衰退は丹沢山地のブナ林全体に認められましたが、地区により進行状況が異なっていました。現在、衰弱・枯死が激しいのは鍋割山、塔ノ岳、丹沢山、蛭ヶ岳など、東丹沢から丹沢中央の主稜線部にかけてです。一方、衰退が少ないのは、西丹沢の大室山、城ヶ尾峠、菰釣山にかけてや、東丹沢の丹沢三峰山稜や堂平です。西丹沢の菰釣山では1980年代にブナやモミの立ち枯れが観察されていますが、最近では衰退がほとんど見られません。
丹沢におけるブナ林衰退要因の変化
丹沢におけるブナ林の衰退要因は、年代により変化し、累積的に進行してきました。
1970〜1980年代
- 大気汚染による樹冠部の縮小化・急性枯死の発生
1990年代前半
- 温暖・小雪化→シカ過密化
- 硫黄酸化物濃度の低下
- 高濃度オゾン影響の持続
1990年代前半
- 高濃度オゾン影響の持続
- 生態系の劣化→ブナハバチの大発生→ブナの衰弱拡大
2000年代
- ハバチ被害による枯死木の増加
- 疎林地・草地の拡大
1980年代頃まで
- 高濃度オゾンによる樹冠の活性度低下(光合成能力低下)→樹冠被害
- 高濃度硫黄酸化物による急性衰退の発生?→ 樹勢の大幅低下?
1990年代
- 温暖・小雪化→シカ過密化
- 硫黄酸化物濃度の低下
2000年代
- 大気汚染(オゾン)影響の加速化
- 温暖化影響の拡大
- ブナハバチによる枯死拡大
過去5年間の衰退状況変化
蛭が岳、檜洞丸、丹沢山などで衰退が進んでいる。全体的には、一部を除いて、急速な衰退はないと考えられます。目視による調査なので誤差を含んでいます。
空中写真を用いた山頂付近の衰退履歴解析
空中写真を用いて1970年から2000年代のブナ林の変化を解析しています。
大室山山頂付近変遷
桧洞丸山頂付近の変遷
蛭ケ岳山頂付近変遷
蛭ケ高木本数の推移判読結果
蛭ヶ岳から鍋割山にかけて高木の本数が減少しています。
空中写真を用いた草地化地点の抽出
ブナ林が草地化した箇所も多く見られます。