全国的にみた神奈川県の気候は、温暖で雨量の多い太平洋側気候です。このような雨量をはじめとした気候は、森林の水源かん養機能を把握するために欠かせない要素です。
ここでは全県及び県外上流域(相模川、酒匂川の上流域)における気温・降水量等の平年値の分布特性について解説します。
なお、各山地の位置については、こちらで定義したとおりです。
※森林の水循環の概要についてはこちら。より詳しい解説についてはこちらをご覧ください。
平均気温の分布は、概ね標高に対応します。県東部などの低地の平均気温は大部分で15°Cを超え、山岳地である水源の森林エリアでは山麓部でも概ね12~15°C程度、1000mを超えるような丹沢の高標高域では、9°Cを下回ります。このような気温の差は、特に植物相の分布に大きく関係し、さらに自然の生態系や景観の違いをもたらしています。森林の水源かん養機能の面では、気温は地面や植物の表面などからの水分蒸発や森林の物質循環や水質にかかわる有機物の分解速度などに直接影響しています。
なお、日最高気温や日最低気温の分布も、同様に大きくは標高に対応します。(図はこちら。)
※標高帯の分布はこちら。
気象庁メッシュ平年値2010より作成
降水量は、一般的に標高が高いほど多くなります。全県でみても、低地の県東部・中央部では平年の降水量は1800mmを下回りますが、西部の山岳地の大部分は1800mmを超え、低地のおよそ1.5倍前後です。西部の山岳地の中では、より西側かつ海側に位置する箱根山地で降水量が最も多く年間3000mmを超えます。一方、内陸の小仏山地で降水量が比較的少ない傾向です。丹沢山地は、両者の中間程度ですが、丹沢山地(東部)の大山周辺は、やや降水量が多い傾向です。
降水量は、水源のかん養源であり水利用に直結しますが、全県の分布は山岳地である西側に偏っており、これらの山岳地に降った雨が人々の水利用を支えていると言えます。
気象庁メッシュ平年値2010より作成
最深積雪の平年値の分布も概ね標高に対応して描かれ、県東部はじめ標高200m未満のところでは概ね10cm未満、水源の森林エリアの最深積雪は10cmを超え、丹沢の高標高域では25cmを超えます。
全国の分布をみると、最深積雪が1mを超えるのは中部地方の日本海側や東北・北海道であり、神奈川県は少ないほうです。
また、
丹沢山地では、1990年代頃から高標高域でニホンジカが多く生息するようになりましたが、暖冬で積雪が少なくなったことも一因と考えられています。
気象庁メッシュ平年値2010より作成
▽関連情報▽
ニホンジカの保護管理について(自然環境保全センター)
過去30年間の観測値から1km四方のメッシュで気温等の平年値が推定・算出されたデータセットで、一般にも公表されています。
全国版の分布図は、気象庁のサイト(メッシュ平年値図)で閲覧できます。
日最高気温の分布も平均気温の分布と概ね相似し、県東部は、海岸と接したごく一部を除き日平均気温は30°Cを超えます。水源の森林エリアでは大部分が30°Cを下回りますが、北部の相模川に沿った低標高域では30°Cを超える箇所があります。
気象庁メッシュ平年値2010より作成
日最低気温の分布傾向も概ね標高と対応します。県東部や相模湾沿いでは、日最低気温は0°Cを下回りませんが、水源の森林エリアは概ね0°Cを下回り、丹沢の高標高域では-5°Cを下回ります。
気象庁メッシュ平年値2010より作成